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「石けんと化粧品の現実」 小澤 王春

 

小澤 王春
おざわ たかはる

1938年、東京生まれ。慶應大学工学部修士課程卒。以後、大学での研究生活を経て、化粧品の研究開発者に転身。現在は美容科学評論家、東京美容科学研究所所長。この他、美容師の全国組織「柿の葉会」で美容科学の勉強会を主催している。
「化粧品(頭髪化粧品も含む)とは、肌をしっとりさせたりするような化学的なものではなく、基本的には皮膚や髪を物理的に補強するもの」という観点から研究開発活動に取り組む一方、合成洗剤の主原料であり、化粧品の近代化を可能にした合成海面活性剤の毒性を30年にわたって、一貫して主張。三重大学医学部の三上教授(故人)らと共に研究スライド「界面活性剤を考える」を製作し、各方面から大きな反響を呼んだ。
マスコミからの執筆依頼も多いが、女性誌からは「正しい化粧品の選び方と美容について」男性誌からは「髪」に関するものが多い。
消費者が自分で安全な日用品を選べるよう「成分辞典」などの編集も手掛ける。


<著書>
化粧品毒性判定事典
バカがつける化粧品
化粧品成分事典
「良い化粧品悪い化粧品」
「悪魔の化粧品」
「美容教室」など多数

 

「石けんと化粧品の現実」 小澤 王春

腸皮食品を体内に「吸収する皮膚」である。
化粧品など物質の「浸透を防ぐ皮膚」である。
肌と腸皮とでは明らかに性質がちがう。

[現実―1]

石けんの脂質は脂肪酸で非常に酸敗しやすい。 ためしに石けんで綿のシャツを洗って数日放置してみるとシャツは異臭を発して薄着の夏などは心配で電車に乗れない。いくら石けんがいいからといって無添加・無香料石けんばかり使っていたら身体や髪から異臭を発する。本人は慣れて気づかないとしても、他人は気づく。

こういう事情でむかしから防腐剤や酸化防止剤を添加してきた。水質に金属イオンがあると石けんがきしんで使いにくい。このため金属イオン封鎖剤も添加した。(エデト酸塩、エチドロン酸など)しかしこれらは毒性が懸念された。異臭をかくすために香料も多めに使ってきた。香料は防腐剤を、ひいては酸化防止剤を兼ねている。刺激があり、ごくまれだがかぶれる人もいる。

しかし・・・

私たちはこのような添加剤入り石けんを何十年もお風呂場で使ってきた。もしも皮膚に化学添加物が浸透すれば、その物質が皮膚に滞留しやすいことは多くの識者が認めるところだ。つまり、肌は毒性物質といわれる添加物や香料によって健康を害し、乾燥肌やシミやシワなどの老化現象を示していなければならない。

にもかかわらず、無添加・無香料化粧品を使い、気を配ってきた顔よりも、添加物など気にせずに有添加・有香料石けんを使ってきた身体のほうがずっと健康でシミもシワもない。

顔がつっぱって石けんでは洗顔ができないと無添加化粧品を使ってきた人は言うが、有添加のずっと、石けんを使ってきた人は、つっぱって石けんが使えないなどとは言わないのである。適度な洗浄を有する石けんを使い続けることで、肌が健康な状態を保ち、肌のバリアが正常に機能しているから洗顔時多少つっぱってもすぐに普通の状態に戻るからだ。

つまり、石けん添加物の有無は皮膚の健康にはほとんど関係がない。もちろん程度の問題もある。添加物の種類や濃度をやたらに増やしたら添加物のために皮膚が殺されてシミだらけになってしまう。しかし、そういう極端な例は現実にありえない。

使用感を優先し、洗顔後の一時的な潤いを重視した合成洗顔剤は、肌のバリア機能を壊して保水する。当然、水分を逃さないための油膜が壊れているから、使いつづけることで乾燥肌になってしまう。
洗顔剤で脂を根こそぎ洗い流して、乳液などで保湿し続けるから、いつまでたっても、本来のバリアが機能しない。更に、このように合成洗剤成分が添加物浸透のきっかけをつくるような洗顔剤であれば、添加物の有無が肌のトラブルに大きく関わってくる。

[現実―2]

石けんの残分が肌に保護膜となってはりつく。これは、脂肪酸系のクリームつまり適度な通気性を有するバニシング系のクリームだ。もう一つ、皮内から分泌されるコールド系のクリームにあたる油脂も肌に定住する菌類の餌となり、彼らは油脂の一部を脂肪酸に変えている。脂肪酸という脂質は酸化しやすい。酸化して代謝、角化促進に関係する必要な毒性物質となり、角質層形成の一助となっているという有力な見方がある。

油脂は菌類の餌になる。肌環境で共存するために適度に繁殖を抑制する必要もある。
しかし、無添加・無香料であるためには添加物を使用できない。菌類が繁殖する油脂は使えない。脂肪酸が十分に機能しない。無添加であるための油剤の代用品が合成ポリマーだ。

合成樹脂や合成セルロースなら感触が油脂に似ているし、腐らないし酸化もしないのである。こうして無添加化粧品を流用したものが主流になった。その結果、油脂や脂肪酸を主剤とすべきクリームや乳液は医薬部外品に変更して成分表示をさけているのが現実だ。

無添加・無香料という要求がこういう商品の流行の原因となった。こういう反面をもう少し知るべきではないか。
実際、こういった商品群の連用で本来あるべき肌環境に変化が起こり、更に使用感のよい洗浄剤を併用し続けた人たちの肌は、近年著しく破壊されている。

[石けん]

石けんの役割は皮脂を適度に除くことである。洗浄が終わった後の、肌に残った分は皮膚表層に存在する酸性物質によって洗浄性を失い安全化する。皮膚の過敏な人は刺激の少ない石けんをえらべばよい。石けんの刺激は香料、油脂に存在していた植物毒(天敵の微生物を撃退するために植物が持つ毒)、phなどに由来する。使ってみて違和感なく使える石けんならどれでもいい。肌には石けんや化粧品の原料の浸透を防ぐバリア機能がある。表面から、皮脂、角質層に分布する角質細胞間脂質〜脂/水/脂という脂質で親水性物質と親油性物質を交互にはじく層が数層、角質自体が添加物と結合して奥部への浸透を防ぐ滞留機能(depot)、表皮全体が異物を抱えながら新陳代謝によって措置側に向かう、さらに白血球の食作用、最後の手段がかぶれ、かぶれた部分の皮膚が異物を抱いて死ぬ。

つまり自浄作用、などのバリア機能が皮膚にはある。石けんはこういう機能を壊さないから安全なのだ。
石けんには石けんを作るメーカーの思想がある。石けんは安全だが、たとえば乳幼児や皮脂の出ない高齢者にとってはどういう石けんがいいか、そういう思想が必要だ。無添加・無香料という単純さは思想とは言えないと思う。

小澤 王春

 

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